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第2章

門の外の、庶民の坂

菊坂

赤門を背にして、本郷通りから西へ、坂を下りてみましょう。菊坂です。 さっきまでの大名屋敷の格式とは、まるで違う世界が広がります。細い路地、古い木造の家並み、井戸。ここは、大名や武家ではない、ふつうの人々が暮らした町でした。屋敷の“内”と“外”が、坂ひとつでくっきりと分かれていたのです。 この菊坂界隈に、明治の作家・樋口一葉が暮らしていました。「たけくらべ」「にごりえ」を書いた一葉は、貧しい暮らしのなかで筆をとり、この坂の途中の質屋にたびたび通ったといわれます。わずか24歳で世を去るまで、彼女が見ていたのは、こうした庶民の本郷の風景でした。 大名屋敷の壮麗さと、その足もとで営まれた人々の暮らし。本郷という町は、その両方を、いまも坂の高低のなかに抱えています。

庶民の町を見たら、いよいよ屋敷の“内側”へ。坂をのぼり、かつての加賀屋敷——いまの東京大学へ入っていきます。

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