第1章
崖の下から、水が湧く
殿ヶ谷戸庭園

最初に訪ねるのは、殿ヶ谷戸庭園です。武蔵野台地の縁——国分寺崖線の斜面を、そのまま生かしてつくられた庭園です。
園内を奥へ進むと、斜面の下に小さな池があります。次郎弁天池。この水は、水道でも、川から引いたものでもありません。目の前の崖の地層のあいだから、自然に染み出してきた湧水です。
なぜ、ここで水が湧くのでしょう。武蔵野台地に降った雨は、地中にしみこみ、水を通しにくい地層の上をゆっくり流れていきます。その地層が、崖のところですっぱりと断ち切られている。だから崖のふもとで、水は地表へと顔を出すのです。
この庭園は大正時代に別荘としてつくられ、のちに三菱の岩崎家の所有となりました。崖と湧水という“もともとの地形”を、庭の景色にそっくり取り込んでいます。人がこの土地の水を、どれほど大切にしてきたか。その最初のヒントが、この池にあります。
庭園を出たら、崖(はけ)を下りながら南西へ。次に向かうのは、湧水の清流沿いに続く「お鷹の道」です。
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